収縮率を計算するために、洗いテストを実施しました。
「革なのに洗うテスト?」
なんて、不思議に思われたでしょうか?
革製品のイメージは「濡らしてはいけない」
といったところでしょうか。
革製品といえば財布等の小物、バッグや靴など、どれも洗濯することはありませんよね。
なので、洗いテストといってもピンと来ないかもしれませんが、
ジャケットなどの衣料に使用する場合や、染め加工する場合には、水に浸すことがあります。
特にジャケットの場合ウォッシュ加工をすることがありますが、
収縮率を調べておかないと後で縮んで型崩れの原因になってしまいます。
例えば、Mサイズで作ったものが縮んでSサイズになってしまったり、ということが起こります。
染め加工する場合にも収縮率がわかっていないと、
1枚の革から10個の商品が作れる予定が、
染め加工時に縮んでしまったので、9個しか作れない。
といったことも起こります。
そうすると商品計画も変わってきてしまうので、
収縮率を調べておくことで事前に対策が可能になります。
ジビエレザーは個大差が大きく、同じ革でも柔らかさやしなやかさが異なるため、
誤差が生じることも考えた上でテストしなければなりません。
ということで、今回のテストはまるごと一頭分を5枚まとめてテストしました。
革の洗いテスト方法
今回使用したのは鹿革の植物タンニン鞣し(ラセッテー鞣し)です。
5枚全ての革に基点を設け、目安の線を縦横に書き入れ長さをはかります。
この長さを基準に、洗いテスト後に計って差が出た分を計算すれば収縮率がでます。
ジャケットのウォッシュ加工を想定しているので、1枚ずつではなく5枚まとめて洗いにかけました。
テストとは言え、失敗すると大きなロスが生じるため扱いは丁寧に行わなければなりません。
無事洗い終わったら、シワは伸ばさずハンガーに吊ります。
干し方による違いもチェックするため、
縦吊り、横吊りそれぞれ試しました。
※頭から尾にかけてを縦、胴回りを横、としています。
ラセッテー鞣しは60度までの熱耐性があるので、低温タンブラー乾燥も理論上可能ですが、
今回は「晴れの国岡山」らしく自然の力をお借りした天日干しで乾燥させました。
革の洗いテスト結果
革は頭から尾にかけての方向で繊維が強いので、縦横で縮率が違ようです。
干すときの吊り方による違いは、
個体差の収縮率よりは、天日干し時の干し方の違いの方が顕著で、
縦吊りしていたものは重さが影響したのか
大きい個体は縮率が小さく、小さい個体は縮率が2倍程度大きいという結果でした。
重さが影響している場合は、
「引っ張られて縮むはずだった部分が縮みきってない」
ということになるので、再び水にくぐらせると更に縮む可能性があります。
横吊りで乾かしたものは個大差がほぼなく、誤差は+-1%程度でした。
丸ごと天日干しの場合は平置きが望ましいですがそうでない場合は横方向に干すことで個大差が出にくいようです。
ウォッシュ加工については、全体にしっかりシワが入り、良い感じの風合いになりました。
薬品類は添加していないので、元の状態より固さとハリが出ています。
アイテム的にはメンズ向けの革ジャンにピッタリな風合いに仕上がりました。
革の縮率計算&レザーのウォッシュ加工まとめ
今回のテストは、植物タンニンなめしの鹿革を使用して行ったものなので、
鞣しの種類や違う生物の場合は違った結果が出ると思います。
また、気象条件でも結果が変わってきますので、参考にされる方はご注意くださいね。